相続遺言判決実例集…(仙台家審・昭和48年10月1日家月26巻8号70頁)


  • (仙台家審・昭和48年10月1日家月26巻8号70頁)
 

(仙台家審・昭和48年10月1日家月26巻8号70頁)


 (仙台家審・昭和48年10月1日家月26巻8号70頁)

「申立人相手方間の親子共同生活上,相手方においては,申立人の鎌懇する飲酒暴鬘言等の行動を自制し,円満な共同生活を企図すべきであるのに,それをしないままで申立人に財産の配分を求め,これが容易に達せられないまま,昭和47年5月12日,家財,農機具,米等持って,一方的に申立人方から別居したことは,従来の農業後継者と目される立場にある者として,又老齢にある申立人ら父母を同居扶養している子の立場として不穏当であり,むしろ,爾前にこそ,別居にしる同居にしるその条件等についても調停等により双方最善の方途を検討解決を図るべきであったと思われる。しかし,上記別居時,申立入その妻ともに病床にある等の監護を要する状態にあったとは認められないし,又相手方及びその妻子が申立人方を去ったあと,申立人夫婦は日常生活上とくに困窮をきたしたともみられず,通常の生活を継続していたところよりすれば,相手方の上記別居,及びその際の物品持出行為をもって申立人を悪意をもって遺棄したものとは認め難い。又,相手方が申立人に対し飲酒の上暴言を吐き,つかみかからんばかりのけんかをしたことは認められるけれども,申立人のいうような財産分与の強要,殴る,蹴るの暴行を申立人に加えた事実は認められない。(結局相手方は財産の配分を得ないで申立人方を去るに至っている)。又相手方の申立人に対する家庭裁判所への調停申立は,申立人を訴え出たという性質のものでなくて,むしろ親子間での和解不可能な事態を調停機関の干与によって円満解決に導こうとするものとみられ,親に対する侮辱行為とみることは出来ない。相手方としても前記のとおり子として穏当を欠く行動があったことは責められるべきところであるが,申立人としても,相手方が農家の長男として営々20有余年間,申立人及びその家族と同居して農耕労働に従事したこと,とくに報酬,資産を受けることなしに現在に至り,同胞7人の中の一人として均分相続制度下の今日,農業後継者としての将来の基盤一農地一一等の帰属について,期待と不安を強くしていること等相手方の立場につき親としての配慮を欠いていたこと,これがひいては相手方の暴言,別居行動の一因となったものと見られ,相手方のみを親不幸をもって難じ,相手方の,申立人に対する20有余年間の寄与を全く配慮しないままで,相手方を相続財産承継者として不相応と断ずるのは酷である。以上要するに,相手方に民法第892条にいわゆる「申立人に対する虐待,重大なる侮辱,又はその他著しい非行』があったものとは認め難い。」

 


 

 


 

 
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